AMD の次世代モバイル向けプロセッサの 1つ、Ryzen 7 5700U の Geekbench 実行結果が現れた。
このことを発見、共有したのは Twitter で活動する APISAK (@TUM_APISAK) 氏である。
それと、まだ確証は出てきていないが、この記事では Ryzen 7 5700U のベースとなる APU を便宜的に Lucienne APU とする。
Lucienne は Renoir と同じ Zen 2 + Vega の構成を取る。
Index
Zen 2アーキテクチャ、x86 Model は 68h (104)
Ryzen 7 5700U の CPUファミリーは 17h (23)
であり、L1命令キャッシュ 32KB、8-Core/16-Thread に対し、L3キャッシュ 4MB*2 という点から Zen 2アーキテクチャ だと考えられる。
x86 Model は 68h (104)
とされ、以前 「PPR for Family 17h Model 60h, Revision A1 Processor」 が公開された際は Family 17h, Model 67h
が Lucienne ではないかと考えたが、実際はそこからずれた Family 17h, Model 68h
となる。
AMD、「PPR for Family 17h Model 60h, Revision A1 Processor」を公開 | Coelacanth’s Dream
その資料では、Family 17h, Model 60h-67h
プロセッサは TDP 4.5〜55W の範囲に対応するとしていたが、Renoir が現在カバーしているのは TDP 10〜55W であるため、他に TDP 4.5〜10W をカバーする Zen 2アーキテクチャ を採用した APU 恐らくは Family 17h, Model 67h
?
がいるのではないかと思われる。
Family17h Processor | CPU Arch | x86_Model |
---|---|---|
Summit Ridge /Naples | Zen | 1h |
Pinaccle Ridge /Colfax | Zen+ | 8h |
Raven Ridge | Zen | 11h |
Picasso | Zen+ | 18h |
Raven2 /Dali | Zen | 18h |
Dali (for Chromebook, some) /Pollock |
Zen | 20h |
Matisse | Zen 2 | 71h |
Castle Peak /Rome | Zen 2 | 31h |
Renoir | Zen 2 | 60h |
Lucienne? | Zen 2 | 68h? |
Lucienne と Cezanne の棲み分けを考える
Lucienne は、Raven に対する Picasso のように、Renoir の後継となる APU だが、
AMD Renoir の兄弟? 現れるは Lucienne | Coelacanth’s Dream
他にも、Lucienne と同時期に登場するとされている APU に、Zen 3 + Vega の構成を取る Cezanne が存在する。
一度、同時期に CPUアーキテクチャの世代が異なる APU が登場することの意味を考え、文字に出力してみる。
プロセス
下は、今回発見された Ryzen 7 5700U と同じ CPUコア/スレッド数、GPU CU数となる Ryzen 7 4800U (Renoir) の仕様を比較した表。
CPU ブーストクロック、GPU クロック共に、Ryzen 7 5700U が 100〜200MHz 高い。
Ryzen 7 4800U 1 | Ryzen 7 5700U | |
---|---|---|
CPU Arch | Zen 2 | Zen 2 |
Core/Thread | 8/16 | 8/16 |
Base Clock | 1.8 GHz | 1.8 GHz |
Boost Clock | 4.2 GHz | 4.34 GHz (4.3-4.4) |
GPU Arch | gfx90c | gfx90c? |
CU | 8 | 8 |
Clock | 1.75 GHz | 1.9 GHz? |
Lucienne 、Cezanne の製造プロセスは当然まだ明らかにされていないが、Renoir や Ryzen 5000シリーズ の TSMC 7nmプロセス (N7) か、TSMC 第二世代7nmプロセス (N7P) 等が候補として考えられる。
N7P は N7 と完全なデザイン互換製を持ち、N7 と比較して、同じ消費電力なら 7% 高い性能を、同じ性能なら 10% 低い消費電力を実現させられるとしている。2
7% の性能向上というのは、Ryzen 7 4800U と Ryzen 7 5700U のクロック差に近くはある。
モバイル向けプロセッサを多く確保するため、例えば Lucienne は N7P、Cezanne は N7 という風にラインを分けるということも思い付くが、どのように棲み分けるかには繋がらない。
アーキテクチャ差も埋められはしないだろう。
Zen 2 と Zen 3
AMD の発表では、Ryzen 5000シリーズ は前世代の Ryzen 3000シリーズ と比較して、24% 高いとしている。3
だが、絶対的な消費電力は、費やすトランジスタ数を増やし、クロックも上げた分、増えているものと考えられる。
レビュー記事を読んでも、Ryzen 7 5800X の実効消費電力は、同じ 8-Core/16-Thread である Ryzen 7 3800XT と比較して約 20% 高いものとなっている。4これは APU である Cezanne でも同様だろう。
Zen 3アーキテクチャ の電力効率が高いとしても、それはデスクトップ向けの高い TDP である場合で、同時に絶対的な消費電力の低さが求められるモバイル向けでは Zen 2アーキテクチャ のが電力効率では逆転する可能性も考えられる。
Lucienne と Cezanne でデフォルトTDPの値は変わらないかもしれないが、cTDPの範囲、ブースト機能の設定、求められる冷却能力は変わってくるのではないだろうか。
また、Lucienne は L3キャッシュ 4MB*2 の構成だが、Cezanne は先日公開された 「Software Optimization Guide for the AMD Family 19h Processors」 から、L3キャッシュ 16MB*1 の構成になると思われる。
AMD、Zen 3 アーキテクチャの詳細を公開 | Coelacanth’s Dream
Cezanne の総L3キャッシュ容量は Lucienne の倍となり、CPUコアの規模も大きくなるため、順当に Cezanne のダイサイズは大きく、製造コストは高いものとなるだろう。
それ程までに規模に差がある訳ではないが Zen 2アーキテクチャ と Zen 3アーキテクチャ は、Intel の Core系アーキテクチャ と Atom系アーキテクチャ の関係に似たものを覚える。
まとめると、同じ TDP であっても、Cezanne は高性能だが採用製品の価格は高く、
Lucienne は Cezanne より性能は劣るが、実効消費電力は低く バッテリー持続時間は長く
、コストパフォーマンスに優れる、といった棲み分けになるのではないかと考える。