AMD は 2020/07/08付で Processor ProgrammingReference (PPR) for AMD Family 17h Model 60h, Revision A1 Processors を公開した。
Tech Docs | AMD
Family 17h Model 60h
は Renoir APU を指し、CPU は Zen 2 アーキテクチャ 最大 8-Core/16-Thread、GPU は Vega アーキテクチャ (gfx908) 最大 8CU、最大 2-Render Backend(8-ROP相当)、TSMC 7nmプロセスで製造される。
Model 60-67h
プロセッサ、Renoir は高いエネルギー効率と優れた性能を実現し、ラップトップ、デスクトップ環境のニーズを満たすため開発された、第9世代APUとしている。
特長として、内部バスに AMD Infinity Fabric (Scalable Data Fabric/SDF) を採用しており、それによって最小限のレイテンシ、最大化された帯域幅の利用効率を可能とし、システム全体の性能を向上させている。
また、Renoir は CPU、GPU、I/O、マルチメディア、メモリインターフェイスが統合された SoC であり、外部にチップセットを必要としないため、BoM(部品点数)を削減している。
搭載されるパッケージには、FP6 と AM4 の 2種類存在し、FP6 はモバイル向けのメインストリームクラス、AM4 はデスクトップ向けとなる。
TDP は、モバイル向けのソリューションで Ryzen Mobile 4000シリーズでは cTDP でも 10Wが下限とされているが
4.5W-55W が利用可能とされている。
内部GPUの Device ID には 0x1636
が使われるとしている。
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謎と推測
今回公開された資料で気になるのは、x86_Model の範囲を Model 60-67h
としている点、対応TDP の範囲を 4.5W-55W としている点だ。
そして、ここから先は個人の推測、妄想が多分に含まれることを留意していただきたい。
それと、PCIe の Gen が明記されていなかったが、これ以上言ってもどうにもならん。
x86_Model から見えること
x86_Model が Model 60-6Fh
ではなく、Model 60-67h
と若干中途半端になっていることには心当たりがあり、恐らく Raven と Picasso と同じパターンと思われる。
まず、Raven の x86_Model は Model 11h
となっており、その後継であり、内部構成はほとんど変わらない Picasso は Model 18h
となっている。
Model 11-18h
と Model 60-67h
の間隔は一致し、そして Raven に対する Picasso のような関係を Renoir に持つ APU には、つい最近名を現した Lucienne がいる。
AMD Renoir の兄弟? 現れるは Lucienne | Coelacanth’s Dream
要は、やはり内部構成、アーキテクチャは Renoir と変わらず、プロセスを最適化または進めた APU(Lucienne) がロードマップ上に存在し、それが Model 67h
とされるのではないかということを主張したい。
TSMC 7nmプロセス(N7) と物理設計に互換性を持つプロセスには、TSMC の第2世代 7nmプロセス(N7P)、6nmプロセス(N6) がある。
N7 と比較して、N7P は同じ消費電力なら最大で 7% 性能向上、同じクロックなら 10% 省電力。
N6 は性能、消費電力に関しては不明で、ただロジック密度は 1.8倍と謳われている。
広い TDP 範囲とその下限
Model 60-67h
プロセッサは TDP 4.5-55W の範囲に対応すると記載されており、TDP 4.5W というのはかなり低く、優秀であるように思える。
Raven2 シリコンダイをベースとする Model 20-2Fh
プロセッサ Dali /Pollock
も TDP は 4.5W から対応しており、これは Renoir と Raven2 のダイサイズが大体同じであることから(約155mm2)、まあ可能なのかもしれないという気はする。
しかしコストという点で両者は大きく異なり、プロセスから、Renoir (7nm) は Raven2 (14nm) の倍近いコストであると思われる。1
モバイル向けの TDP 10W 以下のラインは、今 Raven2 ベースの Dali が頑張って埋めているところであり、TSMC 7nmで製造される Model 60-67h
がそのラインに来るとして一体いつになるのかという気になるし、コストと必要とされる性能を考えても無駄が多く、しばらく、だいぶ長い間は Raven2 で十分ではないかとも思う。
AMD は ISSCC 2020 にて、Zen 2 アーキテクチャ の CCX構成に、Raven2 と同様であろう 2-Core、L3 4MB の構成を発表しており、2
将来 TDP 10W 以下のラインを Raven2 から置き換えるのであれば、その構成を採用した低コストなプロセッサが適しているように思う。
結局の所、今回の Model 60-67h
プロセッサが TDP 4.5W から対応可能というのは、意図が読み切れないところがある。
また、Device ID も 0x1636
だけでは足りなくなるはずだ。
この世代のAPUも複雑になる気がしてきた。
Family17h Processor | CPU Arch | x86_Model |
---|---|---|
Summit Ridge /Naples |
Zen | 1h |
Pinaccle Ridge /Colfax |
Zen+ | 8h |
Raven Ridge | Zen/+ | 11h |
Picasso | Zen+ | 18h |
Raven2 /Dali |
Zen | 18h |
Dali(for Chromebook, some) /Pollock |
Zen | 20h |
Matisse | Zen 2 | 71h |
Castle Peak /Rome |
Zen 2 | 31h |
Renoir | Zen 2 | 60h |
Lucienne? | Zen 2 | 67h? |
参考リンク
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【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】AMDアーキテクチャの変化の原因となった7nmプロセスの特性 - PC Watch ↩︎
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Zen 2: The AMD 7nm Energy-Efficient High-Performance x86-64 Microproc…,
https://image.slidesharecdn.com/isscc2020zen2finalfordistribution-20200224-200224225255/95/zen-2-the-amd-7nm-energyefficient-highperformance-x8664-microprocessor-core-9-638.jpg?cb=1582584849 ↩︎