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AMD Navi21 /Sienna Cichlid 情報近況 ―― GDDR6と省電力とサーバ向けと 【2020/07/21】

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VRAM には GDDR6 を採用か

Sienna Cichlid は GPUメモリに、Navi10/14 同様 GDDR6メモリを採用すると見られる。

根拠となるのは以下のパッチであり、
[PATCH 095/207] drm/amdgpu: add vram_info v2_5 in atomfirmware header VBIOS から情報を読み取るコードatomfirmware.h に、Sienna Cichlid をサポートするため追加された部分には GDDR6メモリ関連のパラメータが記述されている。

先日、Sienna CichlidXGMI をサポートするという記事を書いたが、コストは掛かるが実装面積は小さく収められる HBM2 ではなく、バス幅は不明なものの GDDR6メモリを使うのであれば、1カード上に 2GPUを搭載、マルチGPUとして接続する形よりも、専用ブリッジを用いて 2カードを接続する形のが現実的かもしれない。
Navi21 /Sienna Cichlid は高速なGPU間通信 XGMI をサポート | Coelacanth’s Dream

AVFSモジュール と Graphics Power Optimizer

Navi10 から倍近い数の AVFSモジュール

AVFS とは、dGPU では Polaris 世代から導入された技術であり、シリコン製造における微妙にばらつきが存在する個々の GPU に対して、動作を測定し、それぞれにより優れた電圧と周波数を選択する。
これにより GPUのある周波数における電圧をより低いものに設定し、消費電力を削減することができる。

その AVFSモジュールが Navi10 で 36モジュール1Navi14 で 28モジュール2 だったのが、Sienna Cichlid では 67モジュールとなる3

Arcturus は 75モジュールと読める。4
モジュール数が GPUの規模を表しているように見えてしまうが、Navi10Navi14 の数があまり変わらないことから、ある世代の GPU でどれだけ省電力機能に力を入れているか次第なようにも思う。
同世代であっても、Navy Flounder用の値が設定されていないため、規模に関しては何とも言えない。

GPO

Sienna Cichlid では GPO(Graphics Power Optimizer) と称す新機能が追加されており、機能の中身としては SMU(System Management Unit) が CU数やメモリ状況に応じて、GPUクロックに 16個の V/F(Voltage /Frequency?) ポイントを作成、RLC がデータ転送に要求されるメモリ速度に応じて 16個のポイントから 1個を選択する。5

Navi10 から GPUクロックの DPM(Dynamic Power Management) は 16レベルとなっていたが、それよりも積極的に最適な V/F を計算、適用する機能なのだろうか。6

上記 AVFSモジュール数と合わせて、Sienna Cichlid ではより最適な電圧/クロックを追求し、消費電力の削減に繋げていると思われる。

RAS機能と EEPROM をサポート

Sienna CichlidVega20Arcturus がサポートする RAS(Reliability, Accessibility, and Serviceability)機能に対応し、不揮発性メモリ EEPROM もサポートする。7

RAS機能の中で EEPROM は VRAM の ECCエラー(2-bitエラー?) が発生した不良ページを記録するのに使われる。
記録された不良ページは R/P/F 3つのフラグで分けられ、F のフラグが立ったものは予約しないように設定される。8
これにより、将来的なさらなるメモリエラーを減らすことができる。
不揮発性メモリである EEPROM を使うため、再起動しても記録された値は残り続ける。

同じような機能に、NVIDIA の Dynamic Page Retirementがある。

それとして、RAS機能と EEPROM を使った不良ページの記録は信頼性を確保したい、GPU を使うサーバ向けの機能であり、それを Sienna Cichlid がサポートするというのは、Sienna Cichlid をベースとしたサーバ向け製品の登場予測に繋がる。
Sienna Cichlid は MxGPU といった VF(Virtual Function) 機能もサポートしており、記述からそのための Device ID も用意されているものと思われる。9

Sienna CichlidRDNA 2 GPU としてグラフィクス向け機能が強化されるだけでなく、XGMI によるマルチGPUサポート、サーバ向け機能もサポートと、厚い構成のコアを持って広くに活躍する GPU となる かもしれない 。あくまで個人的な推測。

しかし、RDNA系 GPU がサーバ向けもカバーするのであれば、今後 CDNA系 GPU は数値計算等の HPC向けといった感じになるのだろうか。
自分の推測であるし、クラウドゲーミングやサーバ向けとして出るんじゃないかと推測した Navi12 も現状 Apple向けの Radeon Pro 5600M しか出ていないため、普通に外している可能性もある。
基本、根拠とソースはすべて示しているので、自分の考えはあくまで一個人のものであり、後は個々人で考えて頂ければ、というのが当サイトのスタンス。

参考リンク