AMD の Marek Olšák 氏より、RadeonSI (OpenGL) ドライバーに GFX11 世代のサポートを追加するマージリクエストが投稿、公開されている。
内容としては GFX11 で従来から変更のあった部分、機能の改良や拡張、あるいは廃止になった部分に対するものが主であり、GFX11 で実装される新機能のサポートといったものはまだ公開されていないように見えた。
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命令キャッシュラインサイズ
GFX11 世代では命令キャッシュラインサイズの変更が行われ、RDNA 1/2 世代の 64 bytes から 128 bytes に拡大された。
命令キャッシュは SQC (Sequencer Cache) であり、複数の CU で共有される。
キャッシュラインサイズは、Aldebaran/gfx90a/MI200 を除いた GFX9/Vega 世代では、命令キャッシュとスカラデータキャッシュが 32 bytes、L1ベクタキャッシュと L2キャッシュが 64 Bytes、
RDNA 1/2 世代ではそこから、命令キャッシュとスカラデータキャッシュが 64 bytes、L0ベクタキャッシュと GL1キャッシュ、GL2キャッシュが 128 bytes となった。
+ if (prefetch_distance) { + if (i.info->chip_class >= GFX11) + binary->rx_size = align(binary->rx_size + prefetch_distance * 64, 128); + else + binary->rx_size = align(binary->rx_size + prefetch_distance * 64, 64); + }
GFX11 では L2キャッシュ (TCC, Texture Cache Channel) のラインサイズは 128 bytes とされており1、SQC である L1命令キャッシュ (それと恐らくは L1スカラデータキャッシュも) のラインサイズのみを拡大した形となっている。
Cache Line Size | L1i | L1k | L1d | GL1 | GL2 |
---|---|---|---|---|---|
GFX9/Vega (without Aldebaran) | 32B | 32B | 64B | - | 64B |
GFX10/RDNA 1, GFX10.3/RDNA 2 | 64B | 64B | 128B | 128B | 128B |
GFX11 | 128B | 128B? | 128B? | 128B? | 128B |
NGG
GFX11 では GFX9/Vega までのレガシーなグラフィクスパイプラインが廃され、NGG (Next Generation Geometry) のみをサポートする。
- radeonsi/gfx11: add assert in legacy vs path (b2669445) · Commits · Mesa / mesa · GitLab
- radeonsi/gfx11: enable NGG-only draw paths (4e9915b5) · Commits · Mesa / mesa · GitLab
NGG は GFX10/RDNA 1 からデフォルトで有効化されているが、 Navi14 (GFX10/RDNA 1) では無効化されており、またデバッグオプションによって切替可能な機能だった。
GFX10.3/RDNA 2 世代ではすべてのチップでデフォルトで有効化されるという段階を踏み、GFX11 世代でレガシーグラフィクスパイプラインを廃し、NGG への完全な置き換えに至った。
またこれまでは無効化されていた NGG Stream-Out (transform feedback) も GFX11 ではデフォルトで有効化される。
現時点で GFX11 の NGG Culling はデフォルトで無効化されているが、これは GFX10/RDNA 1 以上の世代でも、RenderBackend (RB) が 2基以上という条件がデフォルトで有効化する条件に含まれており、GPU の規模によって効果に違いがあることが理由だろう。
NGGカリングのようなシェーダーベースのカリング処理は、効率が Pixel Shader のスループットに依存するとされている。
RADV + RDNA 2 で NGGカリングがデフォルトで有効に | Coelacanth’s Dream
内部での検証が進み、効果があると分かれば切り替えられると思われる。
+ if (sscreen->info.chip_class >= GFX11) { + sscreen->use_ngg = true; + sscreen->use_ngg_streamout = true; + /* TODO: Disable for now. Investigate if it helps. */ + sscreen->use_ngg_culling = (sscreen->debug_flags & DBG(ALWAYS_NGG_CULLING_ALL)) && + !(sscreen->debug_flags & DBG(NO_NGG_CULLING)); + } else { + sscreen->use_ngg = !(sscreen->debug_flags & DBG(NO_NGG)) && + sscreen->info.chip_class >= GFX10 && + (sscreen->info.family != CHIP_NAVI14 || + sscreen->info.is_pro_graphics); + sscreen->use_ngg_streamout = false; + sscreen->use_ngg_culling = sscreen->use_ngg && + sscreen->info.max_render_backends >= 2 && + !(sscreen->debug_flags & DBG(NO_NGG_CULLING)) && + LLVM_VERSION_MAJOR >= 12; /* hangs on 11, see #4874 */ + }
Pixel Shader への入出力用バッファ、パラメーターキャッシュ (Parameter Cache, PC) の規模は 1024、Sienna Cichlid/Navi21 等と同じ規模となっている。
+ if (info->chip_class >= GFX11) { + info->pc_lines = 1024; + info->pbb_max_alloc_count = 255; /* minimum is 2, maximum is 256 */
VRS
GFX10.3/RDNA 2 世代における VRS (Variable Rate Shading) は、粒度 (coarse) 4 pixels (2x2) までのサポートだったが、GFX11 では 16 pixels (4x4) に対応する。
DCC
GFX11 では DCC (Delta Color Compression) が改良され、これまではフォーマットのサポートが部分的だったが GFX11 ですべてのフォーマットをサポートするようになった。
また、always_allow_dcc_stores
フラグは、dGPU では性能低下のリスクがあることから、GFX10.3/RDNA 2 世代の APU でのみデフォルトで有効化されていたが、GFX11 では dGPU, APU 問わずデフォルトで有効化される。
- radeonsi/gfx11: always allow DCC stores (f81dafdb) · Commits · Mesa / mesa · GitLab
- radeonsi/gfx11: enable arbitrary DCC format reinterpretation (2ea6b525) · Commits · Mesa / mesa · GitLab
/* DCC stores have 50% performance of uncompressed stores and sometimes * even less than that. It's risky to enable on dGPUs. */ sscreen->always_allow_dcc_stores = !(sscreen->debug_flags & DBG(NO_DCC_STORE)) && (sscreen->debug_flags & DBG(DCC_STORE) || sscreen->info.chip_class >= GFX11 || /* always enabled on gfx11 */ (sscreen->info.chip_class >= GFX10_3 && !sscreen->info.has_dedicated_vram));
+ /* All formats are compatible on GFX11. */ + if (sscreen->info.chip_class >= GFX11) + return true; +
VCN4
VCN4 では MPEG1/2, MPEG4, VC1 の HWデコードをサポートをしないため、それぞれの部分に chip_class
が GFX11 以上の場合は false
を返す記述が追加されている。
case PIPE_VIDEO_FORMAT_MPEG12: - return profile != PIPE_VIDEO_PROFILE_MPEG1; + if (sscreen->info.chip_class >= GFX11) + return false; + else + return profile != PIPE_VIDEO_PROFILE_MPEG1; case PIPE_VIDEO_FORMAT_MPEG4: - return 1; + if (sscreen->info.chip_class >= GFX11) + return false; + else + return true;
case PIPE_VIDEO_FORMAT_VC1: - return true; + if (sscreen->info.chip_class >= GFX11) + return false; + else + return true;
だがそれよりも上の部分で、[MPEG12, MPEG4, VC1]
かつ family
が Beige Goby/Navi24 以上 (Beige Goby/Navi24, Yellow Carp/Rembrandt, GFX1036) の場合 false
を返すようになっているため、不要な気もする。
switch (param) { case PIPE_VIDEO_CAP_SUPPORTED: if (codec < PIPE_VIDEO_FORMAT_MPEG4_AVC && sscreen->info.family >= CHIP_BEIGE_GOBY) return false;
VCN4 では AV1デコーダー部が従来のものからアップデートされたような記述がある。
ただ、AMDGPUドライバーへの VCN4 に関するパッチによれば、現時点ではデコーダーが対応するピクセルサイズは VCN3 から変更はない。2
+#define RDECODE_AV1_VER_0 0 +#define RDECODE_AV1_VER_1 1 +
case CHIP_GFX1102: dec->jpg.direct_reg = true; dec->addr_gfx_mode = RDECODE_ARRAY_MODE_ADDRLIB_SEL_GFX11; + dec->av1_version = RDECODE_AV1_VER_1; break;
Chip, Family
GC (Graphics Compute) IP のバージョンと、LLVM 等で用いられる GPU/GFX/TargetID は近いフォーマットながら一致は以前からしていなかったが、この世代でもそれは同様らしい。
現時点で AMDGPUドライバーには GC 11.0.{0, 1, 2} のサポートを追加するパッチが投稿されているが、対応する GFX ID の対応は以下の表のようになっている。
GC IP ver | GFX ID | |
---|---|---|
11.0.0 | gfx1100 | dGPU |
11.0.1 | gfx1103 | APU |
11.0.2 | gfx1102 | dGPU |
11.0.3? | gfx1101? | dGPU? |
下引用部で、チップの判定に使われる eRevisionId
の範囲がそのままの並びになっていないが、RadeonSI では GFX ID をベースにした名前を用いていることと、先に書いたように GC IP と GFX IP が必ず一致はしないことが関係していると考えられる。
+#define AMDGPU_GFX1100_RANGE 0x01, 0x10 +#define AMDGPU_GFX1101_RANGE 0x20, 0xFF +#define AMDGPU_GFX1102_RANGE 0x10, 0x20 + +#define AMDGPU_GFX1103_RANGE 0x01, 0xFF +