プロプライエタリな BIOS (firmware) の置き換えを目指すフリーソフトウェアプロジェクト Coreboot に、Alder Lake-N の CPUID, DeviceID を追加するパッチが投稿、公開されている。
CPUID
Intel CPU では CPUID における Model
がマーケットセグメント別に割り当てられていることが多く、例えば Alder Lake-M/P はどちらもモバイル向けであり、Model: 0x9A (ALDERLAKE_L)
が割り当てられている。1
ALDERLAKE_L と Alder Lake-P/M | Coelacanth’s Dream
今回のパッチによれば Alder Lake-N には、デスクトップ向けの ALDERLAKE_S (Model: 0x97)
ともモバイル向けの ALDERLAKE_L (Model: 0x9A)
とも異なる、Model: 0xBE
が割り当てられている。
#define CPUID_ALDERLAKE_S_A0 0x90670 #define CPUID_ALDERLAKE_A0 0x906a0 #define CPUID_ALDERLAKE_A1 0x906a1 #define CPUID_ALDERLAKE_A2 0x906a2 #define CPUID_ALDERLAKE_A3 0x906a4 #define CPUID_ALDERLAKE_N_A0 0xb06e0
デスクトップ向けでもモバイル向けでもないことから、Alder Lake-N は組み込み向けのプロセッサではないかと思われる。
ただ intel-family.h にはまだ ALDERLAKE_N (Model: 0xBE)
は追加されておらず、他 Alder Lake 同様に Golden Cove + Gracemont のハイブリッドアーキテクチャを採るのか、組み込み向けとして処理性能を安定させるため Gracemont だけの構成とするのかなどは不明。
余談だが、 Intel Corporation の Githubレポジトリの 1つ intel/dptf (Intel (R) Dynamic Tuning for Chromium OS) には既に Meteor Lake M & P, N, S の CPUID が記載されており、モバイル向けに M & P、デスクトップ向けに S、そして恐らく組み込み向けだろう N の 3つのセグメントに分かれる方針は Meteor Lake にも用いられると思われる。
#define CPUID_FAMILY_MODEL_MTL_M_P 0x000A06A0 // Meteor Lake M & P #define CPUID_FAMILY_MODEL_MTL_N 0x000A06B0 // Meteor Lake N #define CPUID_FAMILY_MODEL_MTL_S 0x000606C0 // Meteor Lake S #define CPUID_FAMILY_MODEL_RPL_S 0x000B0670 // Raptor Lake S #define CPUID_FAMILY_MODEL_RPL_P 0x000B06A0 // Raptor Lake P
GPU
GPU部の DeviceID も 0x46A0/0x46A3
の 2つが追加されている。
#define PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_M_GT1 0x46c0 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_M_GT2 0x46aa #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_M_GT3 0x46c3 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_N_GT1 0x46A0 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_N_GT2 0x46A3
Mesa3D 内の iris_pci_ids.h では、2つの DeviceID は Alder Lake GT2 に当たるため、Alder Lake-N の GPU部は Alder Lake-M/P 同様に最大 96EU の構成とされる。
また Alder Lake-N の DeviceID の上に PCI_DEVICE_ID_INTEL_ADL_M_GT3
があるが、この DeviceID: 0x46C3
も Alder Lake GT2 に当たる。そのため製品的な意味では GT3 なのかもしれないが、最大構成としては Alder Lake GT2 (96EU) だと思われる。
あるいは、Jasper Lake の GPU部の DeviceID にも GT1 から GT4 があるが、Intel のドキュメントによれば GT4 (0x4E55)
は 16EU、GT3 (0x4E61)
は 24EU、GT2 (0x4E71)
は 32EU、GT1 (0x4E51)
は予約された ID にあたるため、単に連番以上の意味は持たないかもしれない。2
(追記)#define PCI_DEVICE_ID_INTEL_JSL_GT1 0x4E51 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_JSL_GT2 0x4E71 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_JSL_GT3 0x4E61 #define PCI_DEVICE_ID_INTEL_JSL_GT4 0x4E55
パッチが更新され、0x46A0/0x46A3
ではなく 0x46D0/0x46D1/0x46D2
が Alder Lake-N GPU部の DeviceID として追加された。
他OSSでの情報から、Alder Lake-N GT1 最大 32EU構成である可能性が高くなった。
Alder Lake-N を搭載する Chromebookボード Nissa, Nivviks, Nereid | Coelacanth’s Dream
参考リンク
- linux/intel-family.h at master · torvalds/linux
- include/pci_ids/i965_pci_ids.h · main · Mesa / mesa · GitLab
- include/pci_ids/iris_pci_ids.h · main · Mesa / mesa · GitLab
- adlrvp: Remove retimer support for N SKU (I0e57fc19) · Gerrit Code Review
- adlrvp-n : configure typec ports redriver (I78defe36) · Gerrit Code Review
- Release 9.0.10600.23029 · intel/dptf@e1f10f9 · GitHub
- coreboot/pci_ids.h at 381860454fb5a1a6ffc4c8d1fdf3f021f75cbcbc · coreboot/coreboot