Geekbench 5 の実行結果に謎の CPU、AMD 4700S Desktop Kit が出現した。
8-Core/16-Thread、Base: 3.60 GHz、Boost: 4.00 GHz という仕様であり、キャッシュは 8x L1i/d 32 KiB、L2 8x 512 KiB、L3 2x 4 MiB。
L1キャッシュサイズと、8-Core に対し L3キャッシュ 2基 (== CCX 2基) という構成から Zen 2 アーキテクチャ だと思われる。
しかし CPUID における識別情報は Family: 0x17(23), Model: 0x47(71)
となっており、一般的に公開されている範囲の情報では既存の Zen系 CPU のどれとも一致しない。
Family17h Processor | CPU Arch | x86_Model |
---|---|---|
Summit Ridge /Naples | Zen | 1h |
Pinaccle Ridge /Colfax | Zen+ | 8h |
Raven Ridge | Zen | 11h |
Picasso | Zen+ | 18h |
Raven2 /Dali | Zen | 18h |
Dali (for Chromebook, some) /Pollock |
Zen | 20h |
Matisse | Zen 2 | 71h |
Castle Peak /Rome | Zen 2 | 31h |
Renoir | Zen 2 | 60h |
Lucienne | Zen 2 | 68h |
VanGogh | Zen 2 | 90h |
AMD 4700S | Zen 2? | 41h |
ただ手掛かりが無い訳ではなく、URL に .gb5 を付けることで得られる JSONデータには Northbridge
、AMD ID13E0 00
の記述が存在した。
他の結果と照らし合わせるに、Northbridge には CPU内部の I/O Root Complex の DeviceID が表示されるようで、Renoir APU の場合では AMD ID1630 00
が記述されている。1 この 0x1630
が Renoir の Root Complex/Northbridge の DeviceID である。2
Northbridge の項目がない結果もあるが、データベースに情報がない時の挙動なのかもしれない。
{ "id": 32, "name": "Northbridge", "value": "AMD ID13E0 00", "ivalue": 0, "fvalue": 0.0 }, { "id": 33, "name": "Southbridge", "value": "AMD A77E FCH 2.6", "ivalue": 0, "fvalue": 0.0 },
そして 0x13e0
は The PCI ID Repository によれば Ariel Root Complex のものと一致する。3
Ariel は一時期 ROCmソフトウェア関連のソースコードに存在したコードネームであり4、オープンソースで、AMD のソフトウェアエンジニア方が公式的に公開した範囲では、Ariel の GPUID が gfx1000 であることが読み取れるくらいだ。gfx1000 は Navi10Lite と呼ばれる GPU にも使われていたらしいが、それ以上のことは知らないし、示せるものも持ち合わせてない。5
では怪しい情報を入れると、Ariel はコンソールゲーム機 Xbox Series S|X, PS5
とかどれかに使われている SoC らしい が、そこから先は調べても噂に噂を重ねるだけであった。
一応それらは CPU に Zen 2 アーキテクチャ を採用し、8-Core を搭載しているため AMD 4700S の素性がそれらと一致する可能性はある。
元はゲーム機向けの APU/SoC を転用したものには Xbox One SoC と同一のダイをベースにする A9-9820 APU (Cato) がいる。だが、Xbox One SoC/A9-9820 はメインメモリに DDR3 を採用しており、まだ一般向けとして拡張可能で、合わせて 28nmプロセスで製造されること、7、8年近く前の SoC であることなど、コスト的にも抑えられる要素を持っていたが、現在の状況でゲーム機に使われている SoC に転用するだけの余裕があるのかは疑問だ。
A9-9820 は Xbox One SoC と同一ダイ | Coelacanth’s Dream
Zen系 CPU のカスタムプロセッサには、CPU に Zen アーキテクチャ 4-Core/8-Thread、GPU に Raven/Picasso APU と同世代のものを 24CU 、メモリには GDDR5 256-bit の構成を取る Fenghuang APU が存在した。
そこからゲーム機に近い性能で、一般的な OS が動作し、一般的な作業をこなせる汎用的なマシンに需要があるとも考えられるが、それでもコストの問題はある。
まさか歩留まり救済策として、一部が思い切り削られている、無効化されているとかであれば、それなりに納得のいく理由を持つ面白いプロセッサだとは思うが、個人の推測と妄想である。
結局 AMD 4700S は謎の CPU だが、当の AMD は公式のサポートページを用意し、BIOS と各種ドライバーを公開している。6 ページは Google検索等の情報では 1,2日前から公開されており、ベンチマークがアップロードされたタイミングとほぼ一緒だ。
もしかしたら近い内に新たな情報が AMD より公開されるかもしれない。
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linux/amd_nb.c at 84292fffc2468125632a21c09533a89426ea212e · torvalds/linux ↩︎
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ROCm-OpenCL-Runtime/rocdefs.hpp at c0567561d1c2a07c9aa63edf940f8589d2ee1dc6 · RadeonOpenCompute/ROCm-OpenCL-Runtime ↩︎
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P4 to Git Change 1703810 by asalmanp@asalmanp-ocl-stg on 2018/11/07 1… · ROCm-Developer-Tools/ROCclr@d379da1 ↩︎