いかに Zen APU は複雑か 補足 (Winston)

この前の記事では説明が冗長になってしまうため、あえて飛ばしたが、
いかに Zen APU は複雑か | Coelacanth’s Dream
Ravenファミリー内のコードネームには、RavenPicassoRaven2 /Dali /PollockRenoir の他に、
Winston というのが存在する。
製品名にはMicrosoft Surface専用の、Ryzen 7 3780U、Ryzen 5 3580Uがあげられる。

しかし、専用品と言っても Picasso から大きな違いは見られず、プロプライエタリなドライバーの中身を見ると、一部で Picasso2 との記述も確認できる。
それでも Winston というコードネームが付けられている。
何故か?

AMDの真意ははかれないが、ヒントらしきものはある。

最近よく見るようになったChromium OSへのパッチだが、コミットメッセージにRaven2ベースである DaliPollock について書かれている。

Dali only has 3 i2c controllers, while Pollock has 5. Both boards use
the same socket. So we determine at runtime how many i2c controllers are
available.

引用元: soc/amd/common: Determine # of i2c controllers at runtime (I397b074e) · Gerrit Code Review

i2c1コントローラーの数が DaliPollock で違い、Pollock の方が多いとされている。
どちらも Raven2 ベースであるため、実際にそれしか持たないのではなく、仕様構成の違いだと推察される。
またどちらも同じソケット(恐らくFP5)を使用したとあるため、ソケットの仕様ではない。
DaliPollock の違いがこれだけとは限らないがLinux Kernelのamd-gfx、ディスプレイ関連に名があるため、Raven2、Dali、Pollockでそれぞれディスプレイコントローラーの仕様が違う可能性がある 、少なくとも i2cコントローラー、仕様構成の違いが新たにコードネームを付けるだけの理由にはなると言える。

そして Winston だが、専用Ryzen搭載Surface発表時のアピールに、以下のものがあった。

Dynamic responsiveness: A fully optimized pen interface delivers unparalleled precision through the revolutionary on-die pen controller.

引用元: Microsoft Takes Pole Position in Laptops based on AMD Technology – AMD

on-board でも on-package でもなく、on-die とあり、ひとまずこれを信じるにしても、
いくらMicrosoftのためとは言え、コンソール機ならまだしもラップトップ向けにわざわざカスタム品を設計、生産するとは考えにくい。
実際、パッケージはRyzen Mobileに通常用いられるFP5で、
AMD Ryzen™ 7 3780U Microsoft Surface® Edition Processor | AMD

ダイ自体も他の Picasso と同一という見方が世間では強い。
そのため、元々 Picasso 内にあった何らかのコントローラーを利用する形を取ったと思われる。
これは仕様構成の違い、と言えるはずだ。

そして、AMDはRyzen 7 3780U、Ryzen 5 3580Uに Winston というコードネームを Picasso とは別に付けた……


という推測。

そう何種類も出ないため、GPUのコードネームが実質SoCをも指し示すことが多いが、
Zen APUには、GPUのコードネームとして、RavenPicassoRaven2Renoir が存在し、
SoCのコードネームにはGPUのそれとは別に、Winston (Picasso)、Dali / Pollock (Raven2) が存在すると考えれば、少しはわかりやすくなるかもしれない。

Update:
 2020/07/20 11:51 JST